地盤調査

<地盤調査>

建物の設計にとって「地盤調査」は重要です。完成した建物が沈下し始めたり,地震で転倒してしまったりしてはいけません。建物の力学的な安全設計を構造設計と言いますが,そのスタートが地盤調査です。

地盤調査は専門の業者が行いますから,通常,建築士がこれをすることはないと思います。建築士がするのは,設計にあたって,どれだけのデータが必要なのかを地盤調査業者に伝えて,具体の調査内容を指示することです。そして,調査結果を分析して設計に反映させることも建築士の役割です。

地盤調査について知りたい場合は,「建築工事監理指針(平成25年版)」(国土交通省官庁営繕部監修)の下巻の末尾にある解説がわかりやすいです。しかし,この監理指針は販売されているものでネット上で見ることはできません。ネット上で見ることができるものとしては,国土交通省の「標準積算基準書(土木工事関係)」の「参考資料」で「第3編 地質調査業務」があります。


地盤調査と言えば「ボーリング」ですが,ボーリングは地盤調査の一部でしかありません。「敷地調査共通仕様書(平成27年)」によれば,地盤調査は,

  1. ボーリング
  2. サンプリング
  3. サウンディング
  4. 地下水調査
  5. 物理探査・検層
  6. 載荷試験

の6つを含みます。

ボーリングとは,地面に穴をあけて掘り進むこと。

サンプリングとは,試験試料にするための土を取り出すこと。

サウンディングとは,その位置で土に変形をあたえて強さを測定すること。

載荷試験とは,地盤に荷重をかけて変形を調べること。 です。

地盤調査に関連するものとして,土質試験があります。地盤調査のサンプリングで取得した土質試料を試験室に持ち帰ってその性状を検査することなのですが,「敷地調査共通仕様書(平成27年)」では,地盤調査とは別のものとして解説されています。

1.ボーリング

ボーリングと言えば,通常はロータリーボーリングを指します。建築工事監理指針では,4つのボーリングをあげていますが,建築分野ではロータリーボーリングがほとんどでしょう。

ロータリーボーリングで選択するのは,ボーリング孔径です。建築工事監理指針では,径の種類として,

66mm,86mm,116mm,150mm以上 の4つを上げています。

径は小さい方が費用も安いですから,通常は66mmを使います。大きい径のものを選ぶのは,特別なサンプリングを必要とする場合です。この選択も建築工事監理指針に解説してあります。

ボーリングをすれば,「ボーリング柱状図」が作成されます。これはボーリングに付属しているもので費用がプラスされるわけではありません(間接費の中で自動計上)。ボーリング柱状図には深さに応じた土質が書かれるだけでなく標準貫入試験の結果であるN値も記載されます(標準貫入試験は別料金)。柱状図の様式や記載内容などは,「ボーリング柱状図作成要領(案)解説書」(建設大臣官房技術調査室監修,平成11年5月)で規定されています。これは「財団法人日本建設情報総合センター」から販売されているもので,ネット上でただで閲覧することはできません。

ではありますが,実は昭和61年版が奈良県から公開されています。「ボーリング柱状図作成要領(案)解説書(昭和61年)」 大阪市も公開しています。ただし,これは移し替えた時に誤植があります。「ボーリング柱状図作成要領(大阪市)

2.サンプリング

サンプリングは,試験試料にする土のサンプルを取り出すことです。サンプリングは,取り出す時の土の状況で,2種類にわかれます。

サンプリング = 乱れた試料の採取 または 乱れの少ない試料の採取

ここでいう「乱れ」とは,地中にある土をその形のままで取り出すか,形がくずれてしまった状態で取り出すかの違いです。粘土質試料の圧縮試験をしたい場合には,地中にあった形のままで取り出さないとその特性が正確に測定できませんから,乱れの少ない状態で取り出す必要があります。一方,粒度分布を調べたい場合には,その形は影響しませんから,乱れた試料であっても可能です。

このように,「乱れた試料」を採取するか,「乱れの少ない試料」を採取するかは,取り出した試料の使用目的によって判断します。

 

「乱れた試料の採取」は,通常,標準貫入試験で得られた資料をそのまま使います。標準貫入試験(JISA1219)は,標準貫入試験用サンプラーが30cm貫入するのに何回の打撃回数がかかるかを測定するものですが,標準貫入試験用サンプラーは筒状になっていて,その穴の中に土が入り込むようになっています。打撃回数を測定したらサンプラーを引き上げてその中の土を取り出して保管・記録するところまでが標準貫入試験に含まれています。

このため,「乱れた試料の採取」でよい場合は,標準貫入試験を実施すれば,試料採取は,おまけでついてきます。

一方,「乱れの少ない試料の採取」を必要とする時は,それを指示しなければいけません。「敷地調査共通仕様書」では,乱れの少ない試料採取は3種類が紹介されています。

① 固定式ピストン式シンウォールサンプラー による方法(JGS1221)

② ロータリー式二重管サンプラー 〃 (JGS1222)

③ ロータリー式三重管サンプラー 〃 (JGS1223)

です。これらについて,土木基準の「第3編 地質調査業務」では,

① シンウォールサンプリングφ86mm

② デニソンサンプリングφ116mm(ロータリー式二重管サンプリング)

③ トリプルサンプリングφ116mm(ロータリー式二重管サンプリング)

という用語で紹介されています。

これらのサンプリングの方法も規格化されたものでなければいけませんから,それは「公益社団法人地盤工学会」が定めています。上記の「JGS0000」がその規格番号で,詳しくは地盤工学会の書籍を見てください。ただ,建築士がサンプリングの規格の中身まで知っておく必要はないはずです。建築士がするのは「地盤工学会のJGS1221に基づく固定ピストン式シンウォールサンプラーによる試料採取をしてくれ」と指示することです。

これらのサンプリングは,どんな地盤でも試料を採取できるわけではありません。例えば,①固定式ピストン式シンウォールサンプラーによる方法(JGS1221)は,N値8以下の粘土質地盤に適するとされています。それぞれのサンプリングと地盤の適否は,建築工事監理指針の表24.1.8(ネット上での閲覧はできない)に書いてあります。

3.サウンディング

サウンディングの代表は,「標準貫入試験」です。その他には,「スウェーデン式サウンディング試験」がありますし,建築工事監理指針では,さらに5種類を紹介しています。

標準貫入試験は,ボーリングとセットで行います。つまり,ボーリングで掘った穴の底でサンプラーが30cm打ち込まれる回数をN値とするものです。

スウェーデン式サウンディング試験は,棒の先端にスクリューのようなものがついたものをねじ込むようにして地中に掘り進むのですが,一定長さの掘削にようする回転数で図るものです。

これらは,統一された規格で実施されなければいけませんから,JISでその手法が規定されています。

標準貫入試験:JISA1219

スウェーデン式サウンディング試験:JISA1221 です。

6.載荷試験

載荷試験として「敷地調査共通仕様書」では,

① 〈孔内水平載荷試験〉(JGS1421)

② 〈平板載荷試験〉(JGS1521)

の2種類を紹介しています。また,建築工事監理指針では,この2つに,

③ 杭の鉛直載荷試験

④ 杭の水平載荷試験

⑤ 杭の引き抜き試験

を加えています。

これらの試験の方法も規格化されたものでなければいけませんから,それは「公益社団法人地盤工学会」が定めています。上記の「JGS0000」がその規格番号で,詳しくは地盤工学会の書籍を見てください。

番外の,土質試験

サンプリングで取り出した土質試料を試験室に持ち帰って検査することを土質試験と言います。土質試験として「敷地調査共通仕様書」では,

① 物理試験

② 変形・強度試験

③ 圧密試験

④ 安定化試験

の4つを紹介しています。

①の物理試験は,土粒子の大きさの分布などを調べるもので,6種類が紹介されていて,具体の試験方法はJISで定められている。

②の変形・強度試験は,圧縮強度などを調べるものです。

③の圧密試験は,地盤の圧密沈下を予測するために行うものです。

④の安定化試験は,CBR試験と呼ばれるものです。

これらの試験をするためのサンプリングが,①の物理試験のほとんどは「乱れた試料採取」でも可能で,②③は「乱れの少ない試料の採取」でなければいけません。そのことは,建築工事監理指針の表24.1.10(ネット上では閲覧できない)に列記してあります。



<作者からのお知らせ>

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地盤の液状化

地盤の液状化判定に必要な調査内容とその判定についてはこちらです。

地盤の液状化の必要調査内容

地盤の液状化の判定

地盤調査の関連情報

孔内水平載荷試験

平板載荷試験

ロータリーボーリング

「ロータリーボーリング」は,動力によりロッド先端に取り付けたドリルビットを回転させ地盤を破砕しながら掘進するものであると建築工事監理指針で解説されています。掘ること自体にJISなどの規格があるわけではありません。

ボーリングの注意事項

造成したての更地でボーリング調査をするならばいいのですが,増築工事などで使っている敷地でボーリングする場合は,地面の中の水道管などの配管を切らないようにしなければいけません。既存の図面を見て,かつ,ボーリングの前に地面を掘ってみてから地中配管がないことを確認してボーリングすべきです。地中には,排水,電力線,ガス管などいろいろなものが埋まっているので,切ってしまったら大変なことになります。

ボーリングに必要な作業日数

20m掘るのに3日か4日,40mなら6日か7日かかります。加えて,準備に2週間,結果を分析して報告書を作るのに3週間ぐらいかかります。20mを4本掘るならば,

14+3.5×4+21=49日=2カ月弱

かかります。ボーリング調査は意外と日数を要します。

地盤工学会

地盤工学会」が出しているJGS1221などの基準類は,ネット上で閲覧することはできません。一覧表なら見ることができます。

地盤工学関係 基準一覧表

 

「地質調査」と「地盤調査」

私はこれまで「地質調査」という言葉を使ってきましたが,「地質調査」は,鉱物資源の探査や活断層の調査のことを言います。建築の設計にあたって支持地盤の地耐力がどれだけであるかを調べるための調査は「地盤調査」と言います。

建築の分野では「敷地調査共通仕様書」に記されたことで,そうなっています。一方,土木の分野では「地質調査」という言葉を用いています。

物理試験・変形強度試験

物理試験で共通仕様書が列記しているは次の6つです。

土粒子の密度試験:JISA1202

土の含水比試験:JISA1203

土の粒度試験:JISA1204

土の液性限界・塑性限界試験:JISA1205

土の細粒分含有率試験:JISA1223

土の湿潤密度試験:JISA1224←乱れの少ない試料

変形・強度試験は次の5つ。←すべて乱れの少ない試料

一軸圧縮:JISA1216

一面せん断:JGS0560,JGS0561

三軸圧縮:JGS0521など

繰り返し三軸:JGS0541,JGS0542

ねじりせん断:JGS0543

③圧密試験は次の2つ。←みだれの少ない試料

土の段階積荷による圧密試験:JISA1217

土の定ひずむ速度積荷による圧密試験:JISA1227



このページの公開年月日:2012年9月

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